十代の頃にしか見えない風景が、このアルバムには詰まっている。
ロッキング・オン・ジャパン             

RAGOUT
『into the crevice.』

ROJR-0029 定価 ¥1,200+税
2013.8.7 リリース
廃盤商品
  • 1. 空から
  • 2. RPG
  • 3. サイレンに沈む
  • 4. 嘘吐きの世界
  • 5. 赤い風船

ディスクレヴュー

世界を否定するのか肯定するのか、ではなく、ただ見つめ続けることの美しさ

もしかしたら、これが今の世代の、新しいメンタリティなのだろうか、なんて思う。
どうにか肯定しようと努力するほどの価値が、今我々の生きるこの世界にはあるのか。あるいは、ひとつひとつ否定し、バツをつけながら生きていくほど、この世界は本当にクソなのだろうか。世界を嫌うことも愛することも許されていないし、嫌う根拠も愛する根拠もなにもない――彼らの音から感じるのは、そんな(語義矛盾的な言い方になるが)明確な「曖昧さ」である。RAGOUTは、そんな「曖昧さ」だけがリアルな手触りとして残されている世代のバンドであり、また、その曖昧さを曖昧さのまま描くことができる、極めて鋭く、そしてまっとうな感性を持ったバンドだ。
たとえば、すっかり大人になってしまった自分なんかはこう思うのだ。「こんな世の中、否定しちゃえばいいじゃん。もしくは、明るく軽くポジティヴに肯定しちゃえばいいじゃん。ていうか、そのつど使い分けていけばいいじゃん。そもそも世の中なんてそんなもんじゃん」。
しかし、RAGOUTは割り切らない。何ひとつ割り切ることなく、ただただ、この価値観をなくした荒野に立ちすくみ、空しく吹き寄せる世間の風を全身に浴びながら、どこか醒めた目でこの世界を見つめ続けているのである。そして、その目に映ったもの、それがそのまま、その曖昧なかたちのまま、このアルバム『into the crevice.』には描きこまれている。世界のかたちがありのまま、曖昧なかたちのまま、である。それはもう、残酷なくらいに「何を言ったらいいのかわわらない」世界として、である。 
だから、このアルバムは新しいのだと思う。まだ二十歳前後の彼らが見、思い、その手で描き出した風景には、なんの色づけもなく、恣意的で都合のいい解釈もない。「肯定する価値」も「否定するほどクソ」でもない。ただ、彼らにとって目の前に広がる光景とは、《嘘が嘘にならない世界》(”嘘吐きの世界”)であり、《灰色の世界》であり、そして、《透明な世界はいつか時を止める》ものなのである(“赤い風船”)。
そう、リアルなものなんてない。あるのは、この目の前に広がる景色と、そこに立ちすくみ、否定も肯定もできず、曖昧さに苛まれている途方に暮れた自分、だけなのだとRAGOUTは言っているのである。だからなのだろう。RAGOUTがかき鳴らす轟音は澄み切っている。肯定も否定もできない自分を包み込むコクーンでも、曖昧さを撃ち抜く楔でもなく、ただただ一定の、心地よいほどのリズムで繰り返される轟音。それは言うなれば、彼らにとっての「呼吸」なのだと思う。その意味を考察し出すと、そこにはまた深いものがあるのだけれど。
どこか醒めたこの光景を若さゆえの傲慢と弾劾するのか、よくある麻疹のような世代的不可避的な自意識と切り捨てるのか。それは聴き手の自由である。もしかしたら、どちらも分別のある正しい判断なのだろう。しかし、ぼくはこのアルバムとは、ありとあらゆる世代に、今自分たちが見ている世界とはこういうものなのだと示す、新たな「目」のようなものなんじゃないかと思う。そして、一切の穢れを知らず、怖いくらい澄みきったこの景色を美しいと感じられる人間でありたいと思う。これがなくては生きていけないというように繰り返される、この呼吸のような轟音を肯定し、心を揺らすことができるリスナーでありたいと思う。(小栁大輔 ロッキング・オン・ジャパン/bridge)
 

プロフィール

Vo&Gt:三浦 聡美
Gt:伊藤 雅景
Ba:駒場 望
Ds:高橋 喜吉
2010年に千葉で結成。1993年生まれの同級生4人が集まったギターロック・バンド。 千葉、本八幡3rd stage を拠点にライヴ活動中で、東京都内でもライブを行っている。 2012年末には「RO69JACK 12/13」で優勝、COUNTDOWN JAPAN 12/13に出演した。 2013年8月7日、初・全国流通盤となるミニアルバム『into the crevice.』をJACKMAN RECORDSからリリース。
RAGOUT 公式サイト http://rag-out.jimdo.com