いったい、何をどうやったら思いつくんだ、
こんな音楽。 兵庫慎司 (ロッキング・オン/RO69)

さよなら、また今度ね
『菅原達也菊地椋介佐伯香織渋谷悠』

ROJR-0026 定価 ¥1,143+税
2013.1.16 リリース
廃盤商品
  • 1. in布団
  • 2. 踏切チック
  • 3. ギンビス ~頭3才未満の唄~
  • 4. 砂かけられちゃった ~関くんへ編~
  • 5. 信号の奴

ディスクレヴュー

さよなら、また今度ねとは、世界へのラヴ・コールである

世の中にはそれはそれはたくさんの恋の歌がある。友情の歌もある。絆の歌もある。それらはみんな、ひとつの物語として、丁寧に包装され、誰かの心から誰かの心へと届けられる。
さよなら、また今度ね(以下「さよ今」)の歌には、物語がない。いや、正確にいうと、物語にならなかった言葉やフレーズや罵りや妄想なんかが、ほとんど拾い上げられたそのまんまのいびつさで、放り出されている。
たとえば、ここでは布団は国家だ。踏切には注文をする。誰もいないのにテレビがついているから、僕の横顔は気持ち悪い。つらいっていうと、砂をかけられる。信号がやっぱりなんだか、飴玉に見える――。
これは、シュールなんだろうか? ふざけた言葉遊びなんだろうか? 演奏だってグシャグシャだし、そういやライヴでは決まって壊れた寸劇をやるし。でも、違うんだと思う。なぜなら、さよ今にとって世界とはそのようなものだからだ。さよ今が見ている世界は、物語がいつになっても成立する気配のない、だから、いつまでたっても何かが起きたり変わったりバラ色になったりしそうにない、あいかわらずこんがらがった、ガラクタのような世界だからだ。それらはいくら集めてみたところで、綺麗な物語になんかならない。もう遅いのは知っているのだ(「踏切チック」)。
だから、さよ今は、僕達はつながることができないと叫ぶ。悲鳴をあげる。僕とあなたは包装された物語をあげたり受け取ったりすることができないと、その小さな胸をつぶしている。ちっぽけな物語にすらならなかったゴミみたいな日常の欠片をてのひらいっぱいに載せて、歌い、演奏する。けれど、だからといってそこにあるのは、絶望じゃない。それでもそんな世界とあなたに何とか関わりたいという、泣きわめきながらの祈りなのだ。
なぜなら、さよ今のメロディは、いきなりあなたの脳内に上がり込んで勝手に歌い出すくらいキャッチーだから。そのサウンドは、止まらないもどかしさそのままに性急だから。そして、その音楽にはいつもどこかに、哀しいフレーズがそっと添えられているから。
これはだから、世界の肯定である。それでもそんな世界と自分と、そしてあなたを愛し、抱きしめ、慈しみ、また誰かと出会って、すべてを丸ごと祝福しようとする終わりなき試みのようなものである。だから、さよ今は、ニトリで買った布団に君と僕との国家を建設するのだし(「in布団」)、踏切に注文するのはあの娘にいて欲しいからだし(「踏切チック」)、隣人がセックスしているから地球儀がもうひとつ欲しくなるのだし(「ギンビス~頭3才未満の唄~」)、缶蹴りしてたら鬼もみんなも泣きたくなったのだし(「砂かけられちゃった~関くんへ編~」)、天井がある部屋から星をみているのである(「信号の奴」)。
だからあえて言おう。さよなら、また今度ねとは、愛である。それは、この時代に生きていくことにほんとうに向き合った者たちによる、世界へのなけなしのラヴ・コールである。とんでもないロック・バンドの登場に、今僕たちは立ち会ったのだと思う。(宮嵜広司)

プロフィール

Vo/Gt/Key:菅原達也
Gt:菊地椋介
Ba:佐伯香織
Ds:渋谷悠
2010年8月、菅原と既に脱退したベーシストが中心になって、千葉で結成。2011年2月、現在のメンバーになる。2012年8月、「RO69JACK 2012」で優勝、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2012に出演。2013年1月16日、はじめての全国流通音源=5曲入りミニ・アルバム『菅原達也菊地椋介佐伯香織渋谷悠』を、JACKMAN RECORDSよりリリース。現在も活動の中心は千葉で、主に本八幡3rd STAGEに出演するほか、新宿や渋谷など都内でもライヴを行っている。
さよなら、また今度ね 公式サイト sayonaramatakondone.jp
さよなら、また今度ね『菅原達也菊地椋介佐伯香織渋谷悠』リリース・インタヴュー











さよなら、また今度ね

L→R
菅原達也(Vo/Gt/Key)
渋谷悠(Ds)
佐伯香織(Ba)
菊地椋介(Gt)
さよなら、また今度ね『菅原達也菊地椋介佐伯香織渋谷悠』リリース・インタヴュー

ただ楽器をジャカジャカやってるんじゃなくて、ちゃんと音楽をやってる人なんだ、っていうアプローチをしたかった

──今回、ミニ・アルバム『菅原達也菊地椋介佐伯香織渋谷悠』が完成しまして。

菅原達也(Vo/Gt/Key) ありがとうございます、お陰様で。

──まず本人たちとしては、どんな手応えなんですか?

菅原 この4人でのレコーディングが初めてだったので、だからやっぱりこう、初期衝動みたいなのが詰め込められたんじゃないかなとは考えております。ギターストロークでこう頑張りましたというか(笑)。

佐伯香織(Ba) 全部デモがあったんですけど、それはヴォーカルの作った宅録だったんで、みんなでレコーディングしたっていうのは今回が初めてだったんだよね。

菅原 だからほんとに、アルバム・タイトルのごとくなんですけど、4人が詰まったアルバムになったとは思います、はい。

──このアルバム・タイトルも、4人の名前が羅列してあるもので、その通りといえばその通りなんだけど、風変わりなタイトルといったら、風変わりなタイトルですよね。

菅原 こう4人の名前を並べたんですけど、あいだにスペースもないものにしたくて、詰め合わせてますよっていうのもありますし、あとはこう、なんですかね、他の言葉じゃ言い表せなくて、こうなってしまったんですよ。

──他に候補とかはなかったんですか?

菅原 候補はないよね? 車で考えたもんね。

菊地椋介(Gt) なんか、『未来へ』とかそういうこと言ってたよね(笑)。恥ずかしいようなやつにしようよって。

佐伯 でも、勝手に私が思ってるのは、菅原さんがヴォーカルなんで、私たちって菅原バンドみたいによく見られがちで。結構ね、いろんな方面から、そんな悪気はなく言われて、まあ、そう言われるのもわかるけど、でもやっぱりこのメンバーでやってるから、さよなら、また今度ねっていうのもあるよねとも思って、いっつも悔しくて泣きそうになっていて、だからこのアルバム名を菅原さんから提案されたときはすごく嬉しかった。

菅原 ちょっと別件になっちゃうかもしれないですけど、今回はアルバムのジャケットも佐伯をセレクトしていて。ヴォーカルじゃなくても、これが要はさよなら、また今度ねだねっていう感じが出てるなと思ったので、あれにしたんですよね。

──今回、初めてのスタジオでのレコーディングだったと思うんですけど、大変でした?

菅原 本当に、大変でした。いつでもやめたいと思った。

菊地 俺も思った。

──それはなんで?

菅原 ひとつ説明すると、最初に渋谷がドラムをまず録ったんですけど、クリックに合わせてドラム叩けないんですよ。もうダメだ(笑)、また今度にしようと思って。

──それ、バンド名そのまんまじゃないですか。

菅原 だけど、次にこいつ(佐伯)がベースを録ったんですけど、したらもう──。

菊地 上手だったね。

佐伯 やった~。レコーディングだけなんか上手かったような(笑)。

菅原 そう。レコーディングだけほんっと上手くてビックリして、お陰さんでまとまって。で、まあ、そこにギターとかを上乗せしてって、できましたっていう。

佐伯 あと、苦労じゃないけど、一回きっくん(菊地)がお弁当作ってきてくれて、レコーディングのときに。

渋谷悠(Ds) ああ、美味しかった。

佐伯 唐揚げとかね、卵焼きとか上手で、みんなでね、食べて美味しかった。

──音楽的には考えていたこととかはあります?

菅原 1曲目が“in布団”という曲で、これだけアルバム用に新しくできちゃった曲なんですけど、アルバムの最初は絶対バラードにしようと思ってたんですよね。理由としては、あの、ちゃんとした音楽をする人たちなんだっていうアプローチをしたかったです、はい。ただ楽器をジャカジャカやってるんじゃなくて、ちゃんと音楽をやってる人なんだ、それをアプローチするには、やっぱり最初はバラードかなあということを考えてはいました。

──ちゃんとした音楽をする人たち、っていうのはどんな意味合いで?

佐伯 馬鹿にされるもんね、よく(笑)。コミックバンドとか1回言われたことある。

菅原 というのもあるし、歌詞もよくわからんって言われるときもあるし、うん。だからそういうのはちょっと違うんだよと、まず聴いてくれよっていうのが“in布団”だっていう気はします。

──実際、歌詞も本当にユニークで、まあ“in布団”は非常にストレートな曲ですけど、例えば“踏切チック”なんかはどんなことがモチーフになっているんですか?

佐伯 これ、あれでしょ? チョコレートあげたかったけど渡せなかった話。

菅原 ああ、それをまあ変換したっていう感じ。ちょっとまあ、好きな人がいたんですけど、居酒屋に飲みに行って、どうしても渡したかったチョコレートがあったんですけど、渡せずに終わった日があったんで。それ終わったあとに友達とカラオケ行って、すごい盛り上がって──悔しいとかそういうのもあったんで──マイクを振り回してたら、テレビの画面割っちゃって(笑)、すげえ怒られて、6万5千円払ったっていうことの曲ですね。そんなこと全然書いていないですけど、元はそれです。

──自分たちのホームページでも、このミニ・アルバムの全曲解説をやっていますけど、「次のアルバムはこれよりもっとやばいアルバムになると思いました」って書いてますよね。今後のことももう考えています?

菅原 ええ。次作りたいですもん、ほんと、早く。僕的には、次は要(かなめ)を作りたいですね、要を。これが軸だっていうものを次は作れる自信はあるので、はい。今回はもう、初期衝動、ガレージパンクみたいな感じになっちゃったんで(笑)。これはこれで俺も満足してるんですけど、次は満足じゃなくて軸を作る目標を持ってます、熱いこと言えば。

佐伯 熱いこと言ってたよね、この前。次のは、これを作って死ぬぐらいの、遺書にするぐらいのこと言ってた。

菅原 そうですね。次はもう、それぐらいの勢いで(笑)。